目くるめくデジカメの世界⑰ ~フルサイズの功罪(後編)~

zero21kei

2017年06月28日 12:08

こんにちは。Kです。


ノーキャンプの時に書き上げた、「目くるめくデジカメの世界~フルサイズの功罪~」の後編をお届けします。



前編の記事はこちら
2017/06/21



後編では、一眼レフの2種類のセンサー、「35mmフルサイズ」と「APS-Cサイズ」の違いについて解説します。


先にある程度答えを言うと、同じボディー構造を備えたカメラに装着される、2つのセンサーの違いは「優劣」ではなく「補完関係」です。

この「メリット・デメリット」をお互いに打ち消しあっていると言うところを重点的に説明してみます。








目くるめくデジカメの世界⑰ ~フルサイズの功罪(後編)~



前回で記事にしたように、一口で「デジタルカメラ」と言っても、想定されているシチュエーションや使い方で、カメラの種類が分かれます。

それは、一眼レフでの2つの種類「35mmフルサイズ」と「APS-C」の2種類のセンサーを持つカメラでも同じです。

もし、どちらかが圧倒的に優れているのなら、わざわざ2種類のセンサーに分ける必要はありません。

ということは、この2つのセンサーにもそれぞれ「メリット」と「デメリット」があり、カメラの設計によって使い分けています。







35mmフルサイズの歴史


「35mmフルサイズ」というのは工業製品の規格です。

工業規格は「性能」もさることながら、ビデオデッキの「βマックス」と「VHS」の戦いの歴史(って若い人は知らないか・・・)でも解るように、市場シェアを獲得することでの「汎用性」というのがとても重要です。


カメラの世界において、「35mm」というのは、フィルム時代に存在した(今もありますが・・・)ロールフィルムの規格で、写真用のフィルムは「135フィルム」という規格でした。



※富士フイルムHPより

その「135フィルム」の1コマの標準サイズが「24 × 36mm」でした。

そして、このフォーマットのフィルムカメラが世界的に売れて「フィルムカメラ」の標準フォーマットとなったのです。

当然、一眼レフに限らず、コンパクトカメラのフィルムから、使い捨てカメラ(写るんですなど)もこの35mmのフォーマットでした。



しかし、ボディーとレンズが一体型のカメラは、デジタルに移行するときに、あえて35mmにする必要が無かったため、その性能に合わせた規格に変更されていきました。

それが、現在のコンデジの主力である「1/2.33型(6.2×4.6mm)」や「1/1.7型(7.6x5.7mm)」というような小型センサーです。


しかし「一眼レフデジタルカメラ」は、カメラボディの他に、レンズ交換用に多くの「カメラレンズ群」があります。

高価な物だと数十万円するレンズが沢山あり、単純にボディーが高性能だからと言って、35mmのフォーマットを簡単に捨てるわけには行きませんでした。



また、35mmというフォーマットは画角や被写界深度など、「写真」の表現力としても重要視される要素があり、結果「一眼レフ」はこの規格に合わせたラインナップとなりました。








APS-Cの歴史


APSというのは「Advanced Photo System」の略で元々は1996年に作られた「(当時の)新しいフィルムのフォーマット」です。



※wikipediaより

APSは「16.7×30.2mm」という35mmより横長の画角のフィルムで、フルサイズだと「Hサイズ」、左右をトリミングして35mmと同じ画面比率にしたものが「Cサイズ」でした。

35mmよりフィルムサイズを小型化したことにより、カメラの小型化が出来るほか、当時の最先端の技術を盛り込んだフィルムでした。


ただ、登場したときから、小型化したフィルムサイズを含め、プロユースやハイアマチュアにはあまり支持されなかったフォーマットです。

「コンパクトカメラ市場」ではある程度成功を収めましたが、同時期に登場して、急速に進化する「デジカメ」に押され、「フィルム規格」としては完全に消滅しました。


ただ、今ある「一眼レフ」でも採用されているように「センサーサイズ」の規格として残っているのです。


特に、デジタル初期においては、大型のセンサーの製造が技術的に難しく、少しでも小さい方が生産しやすかったのがあるようです。


APSのフィルムの方のメリットは、もちろんデジタルでは全く役に立ちませんが、センサーサイズとしてのメリットは、小さい事によってカメラをレンズを含めて小型化出来ることです。









解像度


35mmフルサイズは、APS−Cに比べて大きさ比としては、1.6倍です。

理論上では、同じ解像度(画素数)であれば、1画素あたりのセンサーサイズはAPS−Cの方が40%となるので画質が落ちる事になります。

ただし、これはあくまで「理論上」の事で、同世代、同メーカーの2種類のカメラの写真を見比べて、それぞれの違いを見つけるのはなかなか難しいと思います。

この比較の場合、画像を拡大してピクセル単位まで厳密に比較するのであれば、当然両センサー間には「画質の差はある」となります。

しかし、現在のデジタル一眼レフは、全体的に2000万画素を超えていて、写真を出力する装置、例えばプリンターで出力する場合でも、A3よりもっと大きいサイズでなければ、ピクセル単位の差は現れません。

また、多くの場合は、PCの画面、スマートフォンやタブレットの画面など「写真」を見る機会の方が多いです。


そのように、極限まで拡大せず、写真全体を見るを評価するのであれば「画質の差はほとんど無い」と言えます。









画角の違い


ちょっと難しい話ですが、レンズには「包括角度」とそれが焦点で結像する「イメージサークル」というものがあります。


※包括角度とイメージサークルのイメージ

写真を撮る場合、受光するセンサーはこの「イメージサークル」の内側にないと、絵を撮る事ができません。

通常、一眼レフの交換レンズは、「35mm」の画角に合わせて設計されています。

「APS-C」は「35mm」よりセンサーサイズが小さい為、「35mm用のレンズ」を使う事が出来ますが、「APSーC専用のレンズ」の場合、「35mm」ではイメージサークルをはみ出してしまい、使う事が出来ません。(そもそも物理的に装着出来なくなってます)




「APSーC」で撮影した場合、「35mm」より画角が狭くなるのはこのためです。

ですので、「APS−C」で「35mmで」同じ範囲の写真を撮る場合、レンズはより焦点距離の短くする必要があります。

ただ、これはデメリットのように聞こえますが、望遠側では、より短い焦点距離でズームできる事を意味します。



また、「35mm用のレンズ」を使った場合、「APS-Cはレンズの性能を引き出せない」と言われる事がありますが、「勿体ない」という点では切れてしまう「画角」分だけの話です。


逆に言うと、イメージサークルの周辺部は「収差」というレンズの特性による「歪み」が出ます。

収差がレンズの中心点に近いほど出にくくなります。

そう言う意味で考えれば、「APS−C」は、「レンズの中心の美味しいところだけを使う」とも言えるのです。










ボケ足(被写界深度)


2種類のカメラで顕著に存在する差は何かと言えば、恐らく一番は「被写界深度」の差です。

「被写界深度」とは俗に言う「ボケ足」の事で、詳しくは以前に記事を書きました。

2017/02/13


「35mm」と「APS-C」では、同一画角を撮る場合、「APS-C」の方が焦点距離が短くなるため、被写界深度が深くなり、ボケ難くなります。

ただ、これには注意が必要で、同一レンズで撮ると、「APS-C」は画角が狭くなるだけで、被写界深度は同じです。


「ボケ」を使った写真を撮る場合「APS-C」はより明るい「F値」のレンズを使う必要があります。


逆に、被写界深度が深いと言う事は、ピントが合う範囲が広いので、「パンフォーカス」という近い所から遠くまでにピントを合わせる時には有利となります。






ファインダーの視認性


もう一つ、一眼レフに限って言えば、光学ファインダーの視界の大きさが違います。

光学ファインダーの構造の話を始めるとキリがないので、触れませんが、どちらにしろ「APSーC」の方がファインダーの見た目の大きさが小さくなる傾向があります。

ファインダーが小さいと言う事は、写真を撮るときに画角のチェックやピント合わせが難しくなる事を意味します。

オートで撮影する場合はそれほど気になりませんが、マニュアルフォーカスを使う場合は、その差が大きな意味を持ちます。

この点が一眼レフの場合は大きな違いとなると思います。


しかし、ミラーレスの場合は、ファインダーは液晶画面となるので、この問題がありませんし、むしろ画面が大きくよりピントや画角のチェックがしやすくなるというメリットがあります。








ボディサイズ・重量


APS-Cは当然センサーを含めて小さく軽く作る事が出来ます。

また、レンズも専用の設計にすれば、理論上は35mmと同性能のレンズも軽量コンパクトになります。


小さく軽いというのは、「持ち歩く」という点で大きなメリットです。

ただ、場合によってはカメラの軽さは「安定感の無さ」にも繋がります。

風が強かったり、環境がよりタフな場合、カメラの剛性が重要になるシチュエーションも存在します。


ということで、問題は「どういったシチュエーションで自分が写真を撮るか?」になってしまいます。

しかし、どちらにしろ、アクティビティに貢献するのはより「軽いカメラ」であるのは確かです。








ブランドイメージ


35mmフルサイズは良い」というのはある意味「ブランドイメージ」に近い部分があります。

そしてカメラメーカーもそのイメージ沿ったブランド戦略をとっており、「35mmフルサイズ=プロ、ハイアマチュア」「APS-C=アマチュア」という形で、製品のラインナップを展開しています。

実際、エントリーモデルに35mmのセンサーを備えている物がほぼ無いので、高性能という意味では、ラインナップ上、35mmフルサイズ機が上になることが多いようです。


確かに、軽くてフットワークの良いAPS-Cの一眼レフは、見方によってはチープで頼りなげに見えます。


そのため、ガッシリとして重い「35mmフルサイズ」はそれだけで「高性能なイメージ」があるようです。


カメラのボディーがしっかりとしたフレームに支えられている事は「写真を撮る」シチュエーションによっては大切な事です。

ただ、そのことによる良さがハッキリと現れるシチュエーションはとても限られています。


通常の範囲であれば、むしろ軽量である事で得られる「アクティビティ」の方がメリットがあり、フォトグラファーによって意見が分かれると思いますが、カメラは軽量な方が良いと思います。



どちらにしろ、「35mm」と「APS-C」という2種類のセンサーには以上のような差があり、その差は優劣ではなく、メリット、デメリットを補完し合う関係にあります。




「一眼レフカメラ」は「写真」という趣味の幅を広げてくれる道具です。



その選択には、「自分が本当に必要としているカメラ」を選べると、その愛機と長く付き合う事が出来ると思います。





続きの記事はこちら
2017/07/12







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