こんにちは。Kです。
今日は約2年ぶりとなる大人気シリーズ「目くるめくデジカメの世界」をお送りします。
今回は「
適正露出」のお話です。
写真とは、どのくらいの「光」を集めるかで出来ています。
そのためカメラの全ての機能は「
光の量を調節すること」に集約されいると言っても過言ではありません。
フォトグラファーはカメラを使い、その光の量を操ることで、自分のイメージ通りの写真を作り出します。
そのようなカメラの操作をする上で、光の量の基準となるのが「
EV値」であり「
段(段数)」です。
このカメラ独特の考え方を覚えれば、写真の全てが理解できるようになるかもしれません。
(出来ないかもしれません)
目くるめくデジカメの世界㉛ 〜適正露出。EV値とカメラの設定~
「適正露出」とは、「
写真にとって一番良い光の量」の事です。
つまり、明る過ぎず、暗すぎない。
そんな状態を捉えた写真が、「適正露出で撮られた写真」と言う事になります。
しかし、写真は「あっちを弄ればこっちとそっちがああなってどーーーん」と言う相対的な関係に彩られてた「曼荼羅」のような世界です。
「何をどうするか解らないなら、オートで撮れば良いじゃない。」
その煩雑さから、まるで18世紀末の貴婦人のような心情になりがちですが、そのふわふわ動く設定に「絶対値」の楔を打ち込むことで、見える景色があるのです。
そして、その楔となるのが、「
EV値(露出値)」なのです。
EV値
EV値とは「Exposure Value」の略で、直訳すると「露光値」となり、意味は同じですが日本語では「露出値」と言います。
この数値はカメラの世界では「
被写体の明るさを示す値」として使われていて、基準となるの明るさの定義があるので、EV値は「絶対値」をとります。
ちなみにその定義とは、
『ISO100で、絞り値がF1、露光時間が1秒のときの露出値をEV0とする』
『露光時間が半分になるか、絞り値が√2(約1.4)倍になるかして届く光量が半分になるごとにEV値は1大きくなる』
の2つです。
2つ目の定義はちょっとこんがらがる表現ですが、届く光量が半分になって適正露出が同じと言う事は、光の強さが倍になっている事を意味します。
そしてEV値は、その数字が1つ増えると、光の強さが「2倍」となり、1つ減ると「1/2倍」となります。
EV値の特性は、このように「EV0」という基準点を起点として明るい方向なら+、暗い方向ならーの数値で「
この世に存在する全ての光の量」を数値にする事ができるのです。
環境光をEV値で数値化すると概ねこの数値になります。
カメラ側の設定については後述しますが、とりあえずここでは、
「
撮るべき被写体の明るさは数値化できている」
というのを覚えて置いて下さい。
そして、カメラ用語の「
段数」は、EV値のうち、『光の量が「2倍」となり、1つ減ると「1/2倍」』と言う変化を「1段」という形で使います。
ですので、EV値との違いは、基準点の有無なので、「段」と言う言葉には「絶対値」が無く、あくまで現状との「相対値」として使います。
センサーのダイナミックレンジ
撮影する環境の明るさは、EV値で表せる事が解りました。
しかし、宇宙には光が全く存在しない「漆黒」から、ビッグバンレベルの「大光量」まで、EV値の+−の範囲はほぼ「
無限大」です。
そしてそれを「写真に撮る世界」に限定しても「地上から見る真夏の太陽」から「新月の天の川」まで、その明暗差は、EV24(24段)〜 EV30(30段)くらいあると言われています。
それに対して「カメラ」が捉える事が出来る明暗差の範囲はかなり限定的で、デジタルカメラの場合、それは「センサー」の性能に依存します。
そして、そのセンサーが捕捉できる明暗の範囲の事を「
ダイナミックレンジ」と言います。
※センサーと光の関係のイメージ
センサーが捉えられる一番暗い光の量から、一番明るい光の量の範囲がデジタルカメラの「ダイナミックレンジ」です。
そして、上の図をイメージすると解りますが、「一番暗い光を1粒として考えてた場合、一番明るい粒の量は何個までか?」で考えれば、その範囲を、EV値(段数)を使って表す事が可能です。
実際に、現行のハイエンド一眼カメラの場合、カタログスペック上は最大で「EV13〜EV14(13〜14段分)」くらいです。
実用範囲としてはEV11(11段分)以下くらいだと思います。
まぁ、ここで重要なのは、スペック的な数値ではなく、
「
自然界の光の範囲に対して、カメラが捉えられる光の範囲の方が圧倒的に狭い」
という事実です。
一部のフォトグラファー達が、ハーフNDフィルターを使うのも、このダイナミックレンジの問題があるためです。
つまり、自然界を写真に撮ると言う事は、「光の範囲を限定して切り取る必要がある」と言うことになります。
絞りとシャッタースピード
EV値の定義が、『ISO100で、絞り値がF1、露光時間が1秒のときの露出値をEV0とする』とある以上、露出決定には、絞りとシャッタースピードが重要な役割を果たします。
絞りとは「レンズ」に付いた羽根状の幕の事です。
これを開くと、レンズを通過する光の量が多くなり、閉めると光の量が少なくなります。
この絞りの量を表す単位が「
F値」です。
F値はレンズという「円」の面積を変えるため、その計算に√(ルート)を使う為、見慣れない数字が並びます。
具体的には、「F1、F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22、F32」という感じで並びます。
この数値は1つ上がると、面積が1/2倍となって、光の量が半分になり、1つ下がると面積が倍になり、光の量が2倍になります。
それに対して、シャッタースピードとは、レンズに光が通る「時間」を表します。
こちらも「1秒、1/2秒、1/4秒、1/8秒、1/15秒、1/30秒、1/60秒、1/125秒、1/250秒、1/500秒」のように、2倍、1/2ステップで刻まれます。
(※1/15、1/125は実用に合わせて数値を調節している場所です)
露光時間が半分になれば、光の量も半分になり、露光時間が倍になれば、光の量も倍になります。
ということで、絞りはレンズの面積を使い、シャッタースピードは時間を使うことで、それぞれ「光の量」を調節します。
適正露出
○ 被写体の光の量はEV値で測定ができる。
○ カメラのセンサーが捉える明るさの範囲はダイナミックレンジという形で数値化される。
○ 絞りとシャッタースピードによって露光される光の量が調節出来る。
以上の3つを上で述べました。
そして、その数値は全て、2倍、1/2倍という「段数」で表現されます。
つまり、写真の適正露出を生み出すカメラの設定の組み合わせは、全て表記できる事になります。
『ISO100で、絞り値がF1、露光時間が1秒のときの露出値をEV0とする』
これが、EV値の定義でした。
では、これを自然光の変化(EV値の増加)を「ISO100」を基準として絞りとシャッタースピードを表にします。
横軸はF値、縦軸はSSです。
このように、適正露出を作り出す、絞りとシャッタスピードの組み合わせは何通りもある事が解ります。
この表で、「EV14」の所を赤くしたのは、前述した「晴れ」の時のEV値だからです。
デジタルから入った人は知らないと思いますが、昔のISO100のフィルムの箱の説明書きには、「晴れの時、絞りf8、シャッタースピード1/250にする」と書いてありました。
この設定を表から追ってくと「EV14」を指してのが解ると思います。
また、「f8、1/250」 もしくは、「f11、1/125」は、風景写真を撮る時のセオリーとなるカメラの設定です。
実際に、「環境光が限定される場合、カメラの設定をマニュアルにして定位置で撮る」といのはテクニックのひとつです。
というのは、カメラのオート設定はカメラに内蔵された「露出計」によって割り出されます。(測光と言います)
しかし、被写体の状況によっては、暗い所と明るい所に差があり、ピントを合わせる位置によって、撮る度に写真の明るさが変わってしまう事があるからです。
私の場合「マニュアル原理主義」では無いので、オートとマニュアルはケースバイケースで使い分けています。
ただ、両方を理解していると、シチュエーションによって使い分ける事が出来るので、より最適解に近づけやすくなると思います。
オートとマニュアルの操作の違い
以上のように、適正露出について、無駄に長い「うんちく」を語ってきました。
ただ、理屈をいくら覚えても全く上手くならないのが、写真の世界のセオリーです。
とくに「使い分け」が良いと分かっても、いざカメラを持ったら「どうやるの?」となると思います。
と言う事で、最後に実際の一眼カメラで「適正露出の見つけ方」を説明してみます。
まず、前提となる「環境光の測定」です。
方法としては「経験に基づいて判断する」か、「露出計で測光する」かのどちらかになります。
「経験に基づいて判断する」と言うともは凄い大変そうですが、ある一定のシチュエーションであれば、こちらが良い場合があります。
例えば、当ブログでお馴染みに「星空撮影」です。
「新月の天の川」であれば、ISO1600、絞り開放、SS20秒、のように、ある程度決めた数値で撮影します。
理由としては「新月の天の川」の環境光EV値にすると「EV-10」近くになるからなのと、そもそもオートではカメラが反応してくれない明るさだからです。
また、晴天のEV14での「f8、1/250」 もしくは、「f11、1/125」辺りも使いやすい設定です。
このように、「環境光が判断出来る」時はそのまま経験を活かして露出を設定すれば良いですが、それ以外のシチュエーションならば(というかそれがほとんどですが)、露出計で光の量を計測する必要があります。
プロ用の機材としてなら、このような「露出計」という機械が存在しますが、一般的にこれを使う人は居ないと思います。
なぜなら、スマホのカメラから一眼カメラまで、オート撮影が可能な全ての「デジタルカメラ」には必ず露出を測るセンサーが内蔵されているからです。
ですので、撮影時にはそれを活用します。
『オート撮影での露出補正』
カメラのオートモードには、メーカーや機種によって「プログラムモード」「シャッタースピード優先AE」「絞り優先AE」など、様々なモードがありますが、こと「露出」に関しては全て同じです。
カメラのセンサーには、露出を測るセンサーがあり、それを使って環境光を測定しています。
これを「測光」と言って、カメラによっては、その測定方法を選べます。
一応、代表的な測光方法を3つ上げてみます。
評価測光(マルチ測光)
画面全体にある測光ポイントで評価を行い、環境EV値を割り出すモードです。
意識せずにカメラを使っているなら、ほぼこのモードで測光しているはずです。
最適な露出結果が得られやすい反面、全体的に極端に明るかったり、暗かったりすると露出を外しやすいモードです。
中央部重点測光
画面の中央部の一定範囲だけで測光するモードです。
測光は中央ですが、フォーカスロックを併用(出来ない場合は露出ロック)すれば、中央以外の被写体にも対応ができるので、被写体がハッキリしている場合、このモードで撮影すると良質の測光結果を得られます。
スポット測光モード
中央部重点測光よりももっと狭いピンポイントの範囲で測光するモードです。
逆光の影の中、強い光の当たっている場所など、明暗差が激しい時に使えるモードです。
以上のように、各種オートモードを、各種測光方式を使って撮るのが「
カメラ任せのオート撮影」になります。
この時、カメラは測光で得たEV値を元にして、絞りやシャッタースピードを決定します。
これは逆に言うと「被写体の明るさを特定してる」という事です。
そのため、オートモードの時に、シャッタースピードや、絞りの値を変えても、写真の明るさは上の表の同じEV値をズレていくだけで、明るさは変わりません。
写真の明るさを変える為には、カメラが判断したEV値そのものを動かす必要があり、これを「
露出補正」と言います。
露出補正はカメラのファインダー、もしくは液晶画面上ある、赤の○で囲った所です。
この図はイメージですが、ほとんどのカメラは同じようなスタイルを採用していると思います。
見方としては、中央の「0」はカメラの露出計が判断した「適正露出」の位置を表しています。
どう言うことかと言うと、例えばカメラの露出計が、被写体の明るさをEV14と判断してたら、0がEV14であり、EV10と判断したら、0がEV10になるという事です。
ですので、オートで撮影する場合、カメラの露出は常に露出計が判断した露出値を起点にするため、グラフは全く動かず、常に「0」を指します。
もし測光中に環境光が変化すれば、露出計はそれを検知しますが、今度はその値を0とするので、変化は絞りやシャッタースピードの値になります。
そして、露出補正はこの0の位置を動かす事で、写真を明るくしたり、暗くしたり出来ます。
具体的な操作方法は、カメラごとに違うので、そのカメラのマニュアルを確認して下さい。
通常、このグラフは、+ー3まであり、値はEV値なので、前後3段分まで明るさを調節出来る事になります。
+側に動かすと、カメラの判断より写真が明るくなり、ー 側にすると、カメラの判断より暗くなります。
オートモードで撮った時、思ったよりも明るすぎたり、暗すぎたりした時、その修正にはこの「露出補正」を使って下さい。
『マニュアル撮影での露出補正』
マニュアル撮影は、マニュアルというので、露出補正は手動になります。
ただ、この時にカメラの露出計を使うと適正露出を見つけるのが楽になります。
使う所は、オート撮影と同じです。
ただし、カメラのモードを「M」のマニュアルに切り替えると、オートの時はピクリとも動かなかった露出補正のグラフが左右にグラグラ動くようになります。
これはマニュアルで、絞り、シャッタースピードが固定された結果、カメラが判断した露出が変化すると、相対的に適正露出が変化するためです。
つまり、マニュアル撮影でも、この露出補正の「0」になるように絞りとシャッタースピードを調節すると、(カメラの測光基準の)適正露出になるという事です。
つまり、マニュアル操作時は、この露出補正を「露出計」として参考にして、撮った写真の明るさを見て、その後の露出値を決定していけば良いことになります。
「マニュアルで撮影する」というのは、やはり難しく、普通に使いこなすにはハードルが高い技術なのは確かです。
しかし「カメラを熟知する」と言う意味で、この露出計を参考にしながら、色んな写真にチャレンジするのは、とても勉強になる事が多いと思います。
絞り、シャッタースピード、EV値、ダイナミックレンジ。
言葉は解り難く、その内容は難解ですが、大切なのはその中にある「
写真の表現の差」です。
多くのフォトグラファーが、難解なカメラの論理に挑むのは、そのロジックの先にある「
神の細部」に少しでも触れるためです。
写真で大切なのは論理ではありません。
しかし、カメラ任せでは見えなくなる物があまりにも多いのも事実です。
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