こんにちは。Kです。
取材の仕事で、福岡への日帰り出張から帰ってたばかりで、へろへろです。
さぁ、皆さんお待ちかね「デジカメの歴史」の6回目です(笑)
前回は「CMOS」という独自のセンサーによって時代を築いたキヤノンのお話でした。
今回はその同じ時にも一つのカメラ業界の雄「ニコン」が、どういった事をしていたのかというお話です。
前回のサブタイトルが「帝国の逆襲」だったので、今回は「ニコンの帰還」にしたいのですが・・・・・・・。
前回の記事
第7話 レジェンド・オブ・デジカメ ⑥ ~ニコンの戦い~
キヤノンが独自開発の「CMOSセンサー」によってプロのフォトグラファーたちから圧倒的な支持を得ていたとき、ライバルの「ニコン」はどうしていたのでしょうか?
ニコンはまず、フラッグシップモデルの「Nikon D1」を進化させます。2001年にはセンサーサイズが倍の530万画素になる「Nikon D1X」を投入。
また、その数ヶ月後には連写性能を引き上げた改良モデル「D1H」を投入します。さらに、ミドルレンジモデルとして「Nikon D100」を投入し、キヤノンの「EOS D60」に対抗していきます。
おそらくこの間、ニコンは次期センサーの開発を行っていたはずで、その成果 が2003年に現れます。
ニコンは2003年11月。開発に10年かけたというふれ込みの自社開発センサー、410万画素の「LBCAST」を搭載したフラッグシップモデル「Nikon D2H」を投入します。
この時ニコンは、「LBCAST」というセンサーに自社の開発をかけているように見えました。「Nikon D2H」はその最初の機種として(結果としては唯一の機種となりました・・・)華々しくデビューしたのです。
「Nikon D2H」自体は2003年の段階でそれほど悪いカメラではありません。
しかし、先代の「Nikon D1X」が510万画素あったのに対して、後継機種の「Nikon D2H」は410万画素となってしまい、見かけ上はスペックダウンしてしまいます。
当時も「Nikon D2H」が「Nikon D1X」に対してどういう位置づけのモデルなのか物議を醸しています。
どちらのしろ、ライバルのキヤノンは「EOS 1Ds」で1110万画素を実現していますから「Nikon D2H」はフラッグシップとしては物足りなさを感じてしまいます。
以前、お話した「単純な高画素化」はコンシューマーモデルであれば不要です。
しかし、商業印刷では、ポスターなど大判の写真も求められるため、カメラのモデルによっては「高画素化」は絶対に必要です。
つまり、高画素は商業写真用にこそ求められていたのです。
このため、全てではないにしろ、ニコンユースのフォトグラファーは「Nikon D2H」の発売当と同時にセンサーサイズが1000万画素を超える「Nikon D2H」の後継機種を待ち望むようになります。
しかしその後、2004年にミドルクラスの「Nikon D70」が610万画素の他社製CCDを搭載して発売されるほか、ニコンからはギガピクセルのフラッグシップモデルは現れません。
その間、キヤノンは2004年末に1670万画素の「EOS-1DsマークII」を投入します。
これによってニコンは画素数で4倍の差を付けられてしまいます。
いくら画素数がカメラの性能の全てでは無いにしろ、「EOS-1DsマークII」の登場はプロのフォトグラファーたちに「ニコンの敗北」という印象を与える出来事でした。
ニコンユーザーは悔しい思いを募らせる事となるのです。
ニコンユーザーの待ち望む、1000万画素超えのカメラがニコンから発売されるのは2005年になります。
それが、1240万画素のフラッグシップ機「Nikon D2X」です。
これにより、ニコンユーザーは溜飲を下げましたが、しかし、よく見ると、その心臓部のセンサーはニコンの「LBCAST」ではなく、ソニーと共同開発(?)のAPS-CサイズのCMOSセンサー「DXフォーマット」でした。
この後もニコンのモデルに「LBCAST」は搭載されることはなく、ニコン独自のセンサーは2007年の「FXフォーマット」を搭載した1200万画素のモデル「Nikon D3」を待つことになります。
ニコンは別に「LBCAST」センサーが失敗だったとも言っていません。
しかし、鳴り物入りで登場した「LBCAST」はそのあとが続かす、次第に話題にすら上らなくなりました。
やっと登場した「FXフォーマット」がニコンのセンサー開発の正統だっとしても、ライバルのキヤノンと比べ、2003年から2007年は、ニコンのセンサー開発史の「空白の4年間」となります。
この当時、フォトグラファー達の間で「ニコンの技術は5年遅れている」とまことしやかに囁かれたのは、このセンサー開発が原因だった思います。
この間の歴史を眺めると、色々な製品をつくる総合企業「キヤノン」と違い、純然たるカメラメーカーとして「情熱」と「矜恃」を持ち、高い「カメラの技術」によって支えられる「ニコン」は、その最も得意する「一眼レフカメラの市場」において「エレクトロニクス」の差によってライバルキヤノンの後塵を拝してしまったのです。
つづく
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